非薬物療法の認知症への効果

科学的に有効と判断される非薬物療法はほとんどない

病気に対する治療法は、いずれの病気でも薬物療法と非薬物療法の2つが重要になります。認知症については根治的な薬物療法がない現在、非薬物療法の役割はけっして小さくありません。

非薬物療法として、日常生活上での家族や介護者、周囲の人たちの上手な介護、適切な対応と、リハビリテーションとしての系統だった治療の2つに大別されます。後者には、記憶訓練見当識訓練認知リハビリテーション認知行動療法作業活動療法芸術療法絵画療法音楽療法)、運動療法など、多くの方法が唱えられています。しかし、実際には科学的に有効と判断される非薬物療法はほとんどないのが実情といえます。

計算ドリルは認知症の進行を予防できるか?

最近、物忘れ外来では「計算ドリルは認知症の治療に有効ですか?」「漢字ドリルを行わせると、認知症の進行を予防できますか?」などの質問がおおいそうです。実際に、これらの計算ドリルや漢字ドリルを患者さんにさせている家族もしばしば見られるそうです。

ドリルの効能の是非を判断する立場ではないですが、そのような質問に対しては「現在、患者さんが喜んでドリルを行っている場合にはそれで良いと思いますが、学校のときに算数や国語が苦手だった方に、認知症になったからといって苦手のドリルを無理矢理やらせても楽しいことはなく、患者さんのためにはなりませんよ」と回答している医師が多いそうです。

現在、認知症に対して記憶訓練などのような体系的リハビリテーションを積極的に施行している医療施設はそれほど多くはありません。家族が患者さんのためにそれらを受けたいと考えても、実際に利用することはなかなか難しいように思います。

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