肛門がん

肛門がんとは

肛門がんは、肛門管や肛門周辺の皮膚に発生する悪性腫瘍です。日本では、全悪性腫瘍の中では比較的まれながんですが、近年、増加傾向にあります。

原因

肛門がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。特に、高リスク型のHPVが深く関与していると考えられています。HPVは性行為によって感染するため、性感染症の一つとして捉えられます。

その他のリスク因子としては、以下が挙げられます。

  • 喫煙: 喫煙は、様々な種類のがんのリスクを高めることが知られており、肛門がんも例外ではありません。
  • 免疫力の低下: HIV感染や免疫抑制剤の使用など、免疫力が低下している状態は、がんの発症リスクを高めます。
  • 肛門周囲の慢性炎症: 肛門周囲の慢性的な炎症、例えば痔や肛門裂傷などが、がんの発症を促す可能性があります。

症状

肛門がんの初期症状は、自覚しにくいことが多く、進行するまで症状が出ないこともあります。しかし、以下の症状が出現する場合があります。

  • 排便時の出血: 鮮血が少量出る場合や、便に血が混ざる場合があります。
  • 肛門周囲の痛み: 腫瘍が大きくなると、排便時の痛みや違和感を感じることがあります。
  • 肛門周囲の腫れ: 肛門にこぶのようなものができたり、腫れを感じることがあります。
  • 排便習慣の変化: 便秘や下痢、残便感などがみられることがあります。

これらの症状は、痔や肛門裂傷など、他の肛門疾患の症状と似ているため、自己判断せず、医療機関を受診することが大切です。

診断

肛門がんの診断には、以下の検査が行われます。

  • 肛門の視診と触診: 肛門周囲に異常な腫瘤や潰瘍がないか、触診によって硬さや大きさなどを調べます。
  • 直腸指診: 指を肛門に挿入し、腫瘍の有無や硬さなどを調べます。
  • 肛門鏡検査: 肛門内に小さな鏡を挿入し、病変を直接観察します。
  • 組織検査: 生検を行い、採取した組織を顕微鏡で調べて、がん細胞の有無を確認します。
  • 画像検査: CT検査、MRI検査、PET-CT検査などを行い、腫瘍の大きさや周囲への浸潤、リンパ節への転移の有無などを調べます。

治療

肛門がんの治療法は、がんの進行度や患者の状態によって異なります。一般的な治療法としては、以下のものが挙げられます。

  • 手術: 早期のがんでは、手術によって腫瘍を切除することが可能です。
  • 放射線療法: 腫瘍に放射線を照射し、がん細胞を殺す治療法です。
  • 化学療法: 抗がん剤を用いて、がん細胞を殺す治療法です。
  • 化学放射線療法: 放射線療法と化学療法を組み合わせた治療法です。

予防

肛門がんの予防には、以下のことが重要です。

  • HPVワクチンの接種: HPVワクチンを接種することで、HPV感染を防ぎ、肛門がんのリスクを減らすことができます。
  • 禁煙: 喫煙は様々な種類のがんのリスクを高めるため、禁煙することが重要です。
  • 安全な性行為: コンドームの使用など、安全な性行為を心がけましょう。
  • 定期的な検診: 肛門に異常を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。

まとめ

肛門がんは、早期発見・早期治療が大切ながんです。HPVワクチン接種や、禁煙など、予防できることも多くあります。肛門に異常を感じたら、早めに医師に相談しましょう。