概要
特発性正常圧水頭症(iNPH)は、脳内に髄液が過剰に溜まり、脳が圧迫されることで、歩行障害、認知機能低下、尿失禁といった症状を引き起こす病気です。特発性とは、はっきりとした原因が特定できないことを意味します。
原因
iNPHの詳しい原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、脳の老化や血管の病気などが関連していると考えられています。
- 脳の老化: 脳の老化に伴い、髄液の吸収機能が低下することが一因と考えられています。
- 血管の病気: 脳の血管の病気、特に動脈硬化が、髄液の流れを妨げることがあると考えられています。
- 髄液産生量の増加: 髄液が過剰に作られることが原因となる場合も考えられます。
症状
iNPHの主な症状は以下の3つです。
- 歩行障害: 小刻み歩行、すり足歩行、開脚歩行などが特徴です。特に、方向転換や狭い場所を歩く際に不安定になり、転倒しやすくなります。
- 認知機能低下: 記憶力低下、注意力低下、判断力の低下などがみられます。
- 尿失禁: 尿意切迫感、頻尿、尿失禁などがみられます。
これらの症状は、徐々に進行していくことが多く、年齢とともに他の脳の病気と間違われることがあります。
診断
iNPHの診断は、問診、神経学的検査、画像検査(CT、MRI)などを総合的に行うことで確定されます。特に、MRI検査では、脳室が拡大している様子が確認できることがあります。また、腰椎穿刺を行い、髄液の圧力を測定することもあります。
治療
iNPHの主な治療法は、髄液シャント術です。この手術では、脳内に溜まった髄液を腹腔や心臓に移し、脳圧を下げることで症状の改善を図ります。髄液シャント術は、有効な治療法であり、多くの患者さんで症状が改善されます。
予防
iNPHの明確な予防法はまだ確立されていませんが、以下のことに注意することで、リスクを減らすことができるかもしれません。
- 高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の管理: これらの病気は、動脈硬化を促進し、iNPHのリスクを高める可能性があります。
- 脳卒中などの予防: 脳卒中も、iNPHのリスクを高める可能性があります。
- 定期的な健康診断: 早期発見・早期治療のため、定期的に健康診断を受けることが重要です。
まとめ
iNPHは、高齢者に多くみられる病気ですが、髄液シャント術など適切な治療を行うことで、症状が改善し、QOLの向上につながることが期待できます。もし、歩行障害、認知機能低下、尿失禁などの症状が気になる場合は、早めに医師に相談しましょう。
注意: この情報は一般的な情報であり、個々の症状や状態については、医師にご相談ください。