腎不全はなんらかの原因で腎臓の機能がはたらかなくなった状態を示し、特定の疾患をあらわすものではありません。
急激に腎機能が停止する急性腎不全と、徐々に腎機能が低下していく慢性腎不全があります。
急性腎不全とは?
急性腎不全は腎機能がそこなわれるために老廃物を排泄することができず、血液は高窒素状態になります。
腎前性急性腎不全
全身の血液の流れが変化して、腎臓に流れ込む血液量が減少したことによって起こります。
いわば、腎臓が虚血の状態になったことが原因です。
この虚血状態を改善すれば、腎機能が戻るのかどうかを診断することが大切です。
腎性急性腎不全
腎組織が直接障害を受けて発症します。
虚血や腎臓に有害な物質によって、尿細管が壊死を起こしてしまいます。
腎後性急性腎不全
尿路の閉塞で発症します。
多くは原因を取り除けば腎機能は回復しますが、治療が遅れると腎性腎不全に移行することも少なくありません。
急性腎不全の病期は大きく3つに分かれ、それぞれの時期に適切な治療がおこなわれます。
乏尿期
発症初期には1日の尿量が400ml以下の乏尿がみられます。
尿には濁りがみられ、タンパク尿は中程度になります。
全身がむくむので体重が増加し、食欲不振や嘔吐などの消化器症状もあらわれます。
利尿期
利尿期に入ると1日2〜3リットル以上の尿が出る多尿傾向になります。
なかには10リットル以上出るケースもあります。
体重が減少し、口渇、皮膚の乾燥などの脱水症状があらわれます。
この時期には輸血などをして脱水状態に陥らないようにすることが大切です。
回復期
尿量も正常値に近くなり安定します。
高窒素血症や高カリウム血症なども改善され、全身状態も落ち着いてきます。
急性腎不全の場合、乏尿期は10〜14日、利尿期から回復期に移るまで1〜3週間くらいかかります。
また最近、乏尿期がなく、多尿から症状が始まる「非乏尿性急性腎不全」も増えてきました。
非乏尿性のほうが血液透析にいたる割合が少ないとされています。
慢性腎不全とは?
慢性腎不全は、腎機能は数ヶ月から数年で徐々に低下していきます。
ほとんどすべての腎臓病が原因になるといっても過言ではありません。
最近では、糖尿病性腎症から起こる慢性腎不全が増加し、すでに末期腎不全の原因疾患の第1位を占めています。
慢性腎不全は、腎機能の低下の度合いによって4期に分けられます。
予備力低下期
腎機能をあらわす目安になるGFRが通常の30%は確保されている。体液の恒常性は保たれている。
機能代償期
GFRが通常の30〜10%。尿量が増えて、高窒素血症になる。
機能非代償期
GFRは殆通常の10%以下。体液の恒常性が保たれなくなる。
尿毒症期
GFRはゼロ。生命維持のために透析療法が必要になる。
腎臓のはたらきは老廃物の排泄、全身の水分の調節、電解質の調節、血圧の維持、内分泌機能の調節など多彩ですが、腎機能の低下で、これらのはたらきが満足にできなくなるわけなので、様々な全身症状があらわれてきます。
一般的に腎臓のはたらきが50%あれば、体内の恒常性は保たれて自覚症状もほとんどないのですが、30%以下になると症状があらわれてきます。