1) 腎臓病別の食事療法

急性腎炎の食事療法

急性期の食事療法のポイントは、塩分水分タンパク質を厳しく制限することです。

食塩は禁止され、タンパク質は1日標準体重1kgあたり0.6〜0.8g水分は前日の尿量に500mlを加えた量だけしか飲んではいけません。

また、急性期には、腎臓からカリウムが排出されにくく、血液中のカリウムが増えて高カリウム血症になります。

その場合には、カリウムの摂取に制限を加えます。

実際には、入院により病院の管理下にあることが多いので、安静と保湿、そしてこの食事療法に関して医師の指導を守るようにします。

発病から2〜4週間すると回復期に入ります。

こうなると腎臓はかなりその機能を回復しているので、急性期におこったような厳しい制限は緩和されます。

尿の量に異常がなく、血圧が下がり、むくみもなくなったら、普通の食事にもどしても構いません。ただし、食塩は1日3〜5gに控えます。

慢性腎炎の食事療法

慢性腎炎の患者さんは、長期にわたってこの病気と付き合っていかなくてはいけません。

そのため、食事療法は非常に重要な位置を占めています。

慢性腎炎の食事療法のポイントは「低タンパク・高エネルギー」です。

タンパク質を制限するとエネルギーの不足を起こしやすくなりますが、それをうまくやり過ごすためには、エネルギー効率のよい油脂類を利用することはよい方法です。

ただ、高エネルギーに気を取られすぎて脂質異常症や肥満にならないように注意しましょう。

食事制限がうまくできない人は、腎臓病治療用特殊食品を試してみましょう。

ネフローゼ症候群の食事療法

ネフローゼ症候群とは、体内のタンパク質が大量に尿中に排出されて、血液中のタンパク質が不足している状態です。

そこで、かつての食事療法では、低タンパク血症の状態を改善するために高タンパク食が推奨されていました。

ところが、近年になって、タンパク質を過剰に摂取すると腎臓に負担をかけやすいことが分かってきたので、過剰な高タンパク食は避けられる傾向にあります。

ですので、尿中に排出されて不足したタンパク質を過剰摂取を防ぎつつ適正量を補うことが必要です。

そのためには肉類・魚介類大豆乳製品などの摂取が重要になってきます。

とくに良質なタンパク質を含む乳製品は毎日摂りたいものです。

糖尿病性腎症と腎硬化症の食事療法

糖尿病性腎症は基本的には糖尿病の食事療法をもとに、高血圧やむくみを抑える食塩の制限が中心になります。

しかしながら、こうした食事療法が腎機能の低下を遅らせることはできても、透析療法の導入を完全に抑えることは難しいと考えてください。

一方、高血圧による腎硬化症には、良性腎硬化症と悪性の高血圧症を招く悪性腎硬化症がありますが、頻度的には良性腎硬化症のことが多いとされています。

一般的な食事療法としては減塩、低タンパク質、高エネルギーを基本とした食事療法と薬物療法を組み合わせるようにします。

悪性腎硬化症の場合は数ヶ月単位で腎不全となり透析療法へと移行してしまいます。

痛風腎の食事療法

痛風腎の治療では尿酸を下げることが第一です。

肉類を食べ過ぎると尿を酸性化させて尿酸が溶けにくくなるので控え、アルカリ化させるために野菜類をたくさん摂取します。

また、体内での尿酸の合成を抑えるにはプリン体の摂取を控えます。

プリン体は魚介類に多く含まれているので、これを控えます。

アルコールは尿を酸性化させ腎臓からの排出が悪くなり尿酸の合成を促進します。

痛風腎の人は出来るだけ禁酒しましょう。

次の記事は『腎臓病の薬物療法』

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